Phantom (ファントム) ~二人の陽人〜
暫し呆然としたハルの脳裏に、
アキとクリスマス・ディナーの約束をしたこと、
その店で信じられない出来事に遭遇し、アキと引き離された記憶が甦る。
そして、今、自分の目の前に居るこの美しい男が、信じ難いことに、現実世界に実在しない筈のものだと理解するしかなかった。
「ご苦労様。よく働いてくれた。お前と仲間達には後で礼をしよう。
もういいぞ」
「はい、それでは私はこれで…」
瑠璃色の瞳の男の側に、黒いスーツを着た若い色白の男が居た。
どこかで見た顔だと思ったが思い出せない。
彼は、男に一礼すると、ハルの顔を見て薄笑いを浮かべた。
「あっ…」
あの店で、入口からテーブルまで案内してくれてウエイターだ…。
あの時感じた違和感は、気のせいなどではなかった。
ハルが思い出した様子に満足して、彼は森の中を立ち去って行った。