Phantom (ファントム) ~二人の陽人〜
ハルは大きく息をした後、デイビット伯爵の目を強く見据えて言った。
「俺は‥アキが生きていてくれるなら、何も要らない。
アイツのいない世界なら、生きていたくはない。
アキの為なら、この命なんか惜しくはないさ。
必要だというのなら、俺の血を全部お前にくれてやる!」
ハルの必死の決心に、男は満足そうに頷き、笑った。
「そうか…。お前の愛は本物だな。気に入ったぞ。
あぁ…やっと彼が、私だけのものになる。
嬉しくて震えが来るほどだ。
役によって変幻自在に様々な表情を見せてくれる彼だ。
俳優として役に生きている彼の魅力を楽しみながら、側に置いておくのも素晴らしいと思ったんだがな…。
しかし、やはりこちらの世界で、彼のことを誰も知らない場所で、誰にも邪魔されずに二人で生きて行く方が賢明だな…。
うん…あちらの世界は、世知辛いことだらけだしな」
デイビッド伯爵は、アキとの未来を想像して頰を緩めた。