Phantom (ファントム) ~二人の陽人〜


湿った地面に縦横無尽に張り巡らされたような木の根に足を取られ、何度も転びそうになる。

鬱蒼と茂った木々の伸びきった枝が、アキの頬や体を容赦なく打つ。


それでもアキは、ハルを探して力の限り走り続ける。





まるで、デジャヴだ…
アキは走りながら考えた。

なのに、違う…。
一番大切なことだけが、あの時と違う…。



あの日の、撮影シーン…
雑木林の中、木々の隙間を縫って走るハルを追い掛けて、俺は必死に走っていた。

目の前にハルの背中が確かにあった。
大きく呼吸をして肩を上下させながら走る、ハルの背中が…。

あの時は、演技だとわかっていたから、ハルの背中が目の前から居なくなるなんて事は、微塵も考えたりはしなかった。

手を伸ばせば、その肩を掴める距離にいたのに…。
どうして今、お前は、俺の前に居ないんだ?
どこへ消えてしまったんだ?

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