夢幻の騎士と片翼の王女

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「わぁ……」



不意に聞こえた声に私はびっくりして振り返った。



「今の…あなたがやったの？」

湖面から目を離さずにそう言ったのは、まだ幼い少女だった。
身なりからすると、その子はどこかの貴族の娘なのかと思えた。



「え？」

「湖の水が踊ってたわ。」

「あ、あぁ…」

「ねぇ、もう一度、やってみせて。」



女の子は、そう言って、エレガントな所作で私の隣に腰掛けた。
女の子の髪なのか、なにかとても甘い香りが私の鼻をくすぐった。



子供と話すのは、ほぼ初めてのことだった。
特に女の子とは…
だから、私は戸惑い、けれど、どこか嬉しいような照れ臭いような気持ちを感じていた。



「ねぇ…お願い！」

「わ、わかった。」



私は湖面に魔法をかけた。
水を規則的に上下させたり、回転させたりするだけの極めて簡単な魔法だ。



「わぁ、すごいっ！」


そんなつまらない魔法に、女の子は頬を染め、瞳を輝かせて喜んでくれた。
私はその顔を見た時に、心の中がじんわりと温かくなるのを感じた。