夢幻の騎士と片翼の王女
「この野郎!」

私は体格の良い男に羽交い絞めにされ、乱暴に引っ立てられて行った。
少年たちは、そんな私を見てにやにやと笑っていた。


私は、数人の大人に取り囲まれながら、町の自警団の詰所に連れて行かれた。
心の中に不安はあったが、私は何も悪いことをしていない。
話せばわかってもらえる…そう思っていた。
だから、逃げ出すこともせず、されるがままに着いていったのだ。







「だから…!何度も言ってるじゃありませんか!
火をつけたのは僕ではありません。
あの場所にいた彼らです!」

私はすべて正直に話した。
この町に来て、全財産を少年達にだまし取られたこと、火を付けたのは彼らで、私はその火を消そうと雨を降らす魔導の力を放ったことを…



だが、大人たちは私の言うことを端から信じてはくれなかった。
金を奪われたことを信じてもらえなかったばかりか、最近、この町では放火が相次いでいるらしく、それをすべて私のせいだと思われたのだ。



「まだガキのくせに、なんて頑固な野郎だ!
さすがは魔導士だな、ろくな者じゃねぇ!」

どれだけ説明しても、誰一人として私の言うことを信じてくれる者はなく、私は、狭くて薄暗い留置場に放り込まれた。



逃げるのは簡単なことだ。
だが、私は何も悪いことはしていない。
ちゃんと話せばきっとわかってくれるはずだ。
今日は私も少し興奮していた。
明日、また落ち着いてしっかり話そう…
そう考えて、留置場の冷たい床に横になった。
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