夢幻の騎士と片翼の王女
「だから…僕はやってないって言ってるじゃないですか!」

私の期待はすっかり裏切られた。
大人達は入れ替わりやって来たが、誰も彼も私の言うことを信じようとはしなかった。



「本当なんです!
彼らが、空き家を借りられるように話を付けてやると言って僕のお金をだまし取り、あの家に放火したんです。」

「あのな…あいつらはそりゃあ確かにやんちゃなところもあるが、皆、貴族の息子達だ。
金に困るような生活はしていない。
それより、おまえはなんでそんなまとまった金を持ってたんだ?」

「魔導の力を使って、誰かから奪ったんじゃないのか?」

私が答える前に、隣にいた男が口をはさんだ。



「違う!あれは、ロイドさんが僕のためにコツコツ貯めておいてくれたお金だ!」

「ロイドさん?誰なんだ、それは…」

「そ、それは……ぼ、僕を引き取って育ててくれた人です。」

「引き取って育てた…?
じゃあ、おまえは孤児なのか?」

「……はい。」

私がそう答えると、男たちはひそひそと小声で何事かを話した。



「いいか?正直に言うんだ。
おまえ…もしかしたら、ロイドという者の家から金を奪ったんじゃないのか!?」

「ち、違います!
僕とロイドさんは、山の中に二人で一緒に住んでいて…」

「山の中……?あ、そういえば、山の中に魔導士が住んでるって聞いたことがあるぞ。」

「じゃあ、二人で町に来ては、空き巣でも働いてたんじゃないのか?」

「違う!僕とロイドさんは、薬草を採って、薬屋さんに買ってもらってたんだ!」



男達は、またひそひそと話をして、一人の男が走って部屋を出て行った。
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