夢幻の騎士と片翼の王女
*
(たったそれだけのことなのに……)
自分でもとても愚かなことだと思う。
たった、それだけのことなのに、私はアリシアにこれほどまで執着している。
いつの日か、彼女に愛されることだけを渇望し…転生を繰り返しながら、私は彼女をずっと探し続けて来たのだ。
いつか思い出してくれるのではないか…
そんな期待をしながら、ひたすら真面目に働いた。
成果を上げれば、国王陛下やアリシアと会うことも出来る。
だから、身を粉にして働き、何度もアリシアと会う機会を作った。
しかし、彼女は、なかなか私のことを思い出さなかった。
「私だ!ほら、あなたがまだ小さい頃、湖で出会っただろう…?」
そう言いたい気持ちはあったが、それだけは言えなかった。
私から言ったのでは意味がないのだ。
彼女が自ら思い出さなければ…
彼女への想いは、日々大きく募っていった。
あの日のことを思い出してほしい。
私のことを気付いてほしい。
私を愛してほしい…彼女の心がほしかった…
だが、私には何も出来ない。
いや、魔導の力を使えば容易いことだ。
しかし、魔導の力を使っては意味がない。
だから、呪いをかけた。
彼女の愛情を受けたものに死を与えるという呪いを…
それは、もしも、彼女に愛されれば私も死ぬということだ。
だが、こんな命などどうでも良い。
彼女に愛されることが出来たなら、私はそれで満足なのだから。
しかし、死んだのは、私ではなくリチャードという騎士だった。
アリシアとは、幼馴染の関係だ。
アリシアに愛されたリチャードが憎くてたまらなかった。
ただ、幼馴染というだけで、彼女の心を奪ったのだから。
それだけではない。
アリシアは、リチャードを想い、あいつの後を追った。
あの時は、アリシアを失った悲しみと嫉妬で心が粉々に壊れるのを感じた。
いやだ…アリシアがいなくなってしまったなんて信じたくない!
私は、魔導の力を使い、彼女をこの世に呼び戻すことを考えた。
だが、それはいまだ誰も成功したことのない魔法だった。
私は、何度もそれに挑戦した。
本に目を通し、材料を集め、魔法陣を描き、何度も何度も…
しかし、私の持つ魔法の力を総動員しても、彼女は戻って来ることはなかった。
絶望の淵にいた時、さらに最悪のことが起こった。
エドモンドに、私のアリシアへの想いを知られてしまったのだ。
まずいことに、アリシアに愛された者に呪いをかけていたことも…
奴が、以前より私に良くない感情を持っていることはわかっていた。
陛下に何を言われるものかわかったものじゃない。
だから、私はあいつを始末した。
そして、彼女の転生を追うことを思いついた。
しかし、彼女の遺体には術がかけられていた。
どんな術もかけられない、防御の術が…
忌々しい…!
私は考えあぐねた末に、記憶を忘れない術を自分にかけた。
死んでも、アリシアのことを忘れたくなかったからだ。
湖でのあの出来事をずっと忘れたくなかったからだ。
そして、私に出来ることはそれしかなかったから…
エドモンドの死について、城では犯人探しが始まっていた。
知らぬ存ぜぬと白を切ることはたやすいことだが、私はアリシアのいない人生を続ける気はなかった。
ある美しい満月の日…
私は、城の見張り台から身を躍らせた…
次の世で、アリシアとまた出会えることを、今度こそ愛されることを夢見ながら……
(たったそれだけのことなのに……)
自分でもとても愚かなことだと思う。
たった、それだけのことなのに、私はアリシアにこれほどまで執着している。
いつの日か、彼女に愛されることだけを渇望し…転生を繰り返しながら、私は彼女をずっと探し続けて来たのだ。
いつか思い出してくれるのではないか…
そんな期待をしながら、ひたすら真面目に働いた。
成果を上げれば、国王陛下やアリシアと会うことも出来る。
だから、身を粉にして働き、何度もアリシアと会う機会を作った。
しかし、彼女は、なかなか私のことを思い出さなかった。
「私だ!ほら、あなたがまだ小さい頃、湖で出会っただろう…?」
そう言いたい気持ちはあったが、それだけは言えなかった。
私から言ったのでは意味がないのだ。
彼女が自ら思い出さなければ…
彼女への想いは、日々大きく募っていった。
あの日のことを思い出してほしい。
私のことを気付いてほしい。
私を愛してほしい…彼女の心がほしかった…
だが、私には何も出来ない。
いや、魔導の力を使えば容易いことだ。
しかし、魔導の力を使っては意味がない。
だから、呪いをかけた。
彼女の愛情を受けたものに死を与えるという呪いを…
それは、もしも、彼女に愛されれば私も死ぬということだ。
だが、こんな命などどうでも良い。
彼女に愛されることが出来たなら、私はそれで満足なのだから。
しかし、死んだのは、私ではなくリチャードという騎士だった。
アリシアとは、幼馴染の関係だ。
アリシアに愛されたリチャードが憎くてたまらなかった。
ただ、幼馴染というだけで、彼女の心を奪ったのだから。
それだけではない。
アリシアは、リチャードを想い、あいつの後を追った。
あの時は、アリシアを失った悲しみと嫉妬で心が粉々に壊れるのを感じた。
いやだ…アリシアがいなくなってしまったなんて信じたくない!
私は、魔導の力を使い、彼女をこの世に呼び戻すことを考えた。
だが、それはいまだ誰も成功したことのない魔法だった。
私は、何度もそれに挑戦した。
本に目を通し、材料を集め、魔法陣を描き、何度も何度も…
しかし、私の持つ魔法の力を総動員しても、彼女は戻って来ることはなかった。
絶望の淵にいた時、さらに最悪のことが起こった。
エドモンドに、私のアリシアへの想いを知られてしまったのだ。
まずいことに、アリシアに愛された者に呪いをかけていたことも…
奴が、以前より私に良くない感情を持っていることはわかっていた。
陛下に何を言われるものかわかったものじゃない。
だから、私はあいつを始末した。
そして、彼女の転生を追うことを思いついた。
しかし、彼女の遺体には術がかけられていた。
どんな術もかけられない、防御の術が…
忌々しい…!
私は考えあぐねた末に、記憶を忘れない術を自分にかけた。
死んでも、アリシアのことを忘れたくなかったからだ。
湖でのあの出来事をずっと忘れたくなかったからだ。
そして、私に出来ることはそれしかなかったから…
エドモンドの死について、城では犯人探しが始まっていた。
知らぬ存ぜぬと白を切ることはたやすいことだが、私はアリシアのいない人生を続ける気はなかった。
ある美しい満月の日…
私は、城の見張り台から身を躍らせた…
次の世で、アリシアとまた出会えることを、今度こそ愛されることを夢見ながら……