夢幻の騎士と片翼の王女
「ご、ごめん…!」

リチャードはそう言うと、不意に私から身体を離しました。
なんとも気まずい雰囲気です。



「本当にごめん……」

私が何も言わなかったから、怒っているとでも思ったのでしょうか。
リチャードは、さらに謝罪の言葉を重ねました。



「怒ってなんかいないわ。」

「え…?」

「……嬉しかったわ……」

恥ずかしかったけど、私は本心を告げました。
リチャードは驚いたような顔をして、私をみつめていました。



「……私……あなたが好き……」

「アリシア…!」

「あなたのことが大好きなの。」

「だめだよ、アリシア…そんなことを言っては……
もし、誰かに聞かれたら……」

「構わないわ。
だって、私は…私は本当にあなたを愛しているんですもの……」

本心を伝えたら、感情が高ぶって、私は涙を流してしまいました。



「アリシア……」

リチャードは、私の涙を指で拭い、そっと抱き寄せてくれました。



「僕も君を愛してる…
でも、そんな想いは絶対に伝えてはいけないと、必死に押さえてたんだ。
君に会う度、君と過ごす時間が長くなればなるほどに、僕は君にひかれていった。
だけど、君はこの国の王女…
そんな君に僕の想いを伝えるなんて、罪以外の何者でもない…ずっとそう思ってこらえて来たのに…なのに、さっきは押さえが効かなくなって……」

「リチャード、嬉しいわ。
こんな私を愛してるって言ってくれて……」



エドモンドのみてくれたことはやはり本当でした。
あまりの嬉しさに心が震えて…私は、リチャードの逞しい胸に顔を埋めて泣きました。
誰かを本気で愛することが出来、そして、愛する人に愛していると言ってもらえたのですから。



たとえ、それが束の間の恋だとしても…
たとえ、結ばれることのない恋だとわかっていても…



私は、とても幸せでした。



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