夢幻の騎士と片翼の王女
気になる存在(side リュシアン)
「あぁぁ…畜生!!」

「な、なんなの?」

突然、半身を起こし大きな声を上げた俺に、裸の女が目を丸くした。



「もう帰れ…!」

「え…?」

「さぁ、早く…!!」

「わ、わかりました。」


女は寝台のまわりに脱ぎ捨てられた衣類を素早く身に着けて、そそくさと部屋を出て行った。
俺は、水差しの水を飲み、小さな溜息を吐いた。



女を抱いても、全然気が晴れない。
その原因はわかっている…あの女…亜里沙だ。



そりゃあ、異国の女なんて初めて見たけど…
それにしても、なんでこんなに気になるんだろう?
俺は、女に不自由したことはない。
アドルフに取られたことは確かにちょっと癪に障るが、そんなにこだわるほど良い女でもなかったはずなのに…



(くそっ!)



窓辺に立ち、俺は、幽閉の塔を見上げた。
あそこにあの女がいる…
かれこれもう十日くらいになるか…



どうしてるんだろう?
やっぱり心細い気持ちでいるんだろうか?
それとも、アドルフの側室になれたことを喜んでいるのか?



アドルフといえば、あれほど亜里沙に執着したというのに、ジゼルとはとても仲が良いようだ。
なんでも、やつれる程毎日ジゼルを抱いているらしい。
あんな不器量な女のどこが良いのやら…



(あいつの趣味は全くわからないな…)


< 133 / 277 >

この作品をシェア

pagetop