夢幻の騎士と片翼の王女
「リュシアン様、このようなことはどうかこれっきりにして下さいませ。」

「……あぁ、わかっている。」

下に降りたら、例の番兵にそう言って釘を刺された。


確かに、毎日こんなことが出来るはずもない。
こんなことを続けていたら、そのうち、陛下の耳にも入るだろう。
とはいえ、やはり亜里沙のことは気にかかる。
なんとか元気付けてやりたいものだが、俺に何が出来るだろうか?



(どうしたものか…)



俺は、部屋に戻り、じっと考えた。
何をすれば、亜里沙の気が晴れるのか、俺に何が出来るのか…
毎日子守歌を歌うというのも、どうにも芸がない。



(……そういえば……)



先日、誰かが話していた。
今、町にとても素晴らしい吟遊詩人が来ている…と。
吟遊詩人の歌は誰もが楽しめるものだ。



(そうだ!)



俺は、次の朝、城を抜け出し、町へ繰り出した。
アドルフとは違い、俺は第一王子とはいえ、王位継承順権もないに等しい。
だから、町に出て行くのも自由と言えば自由だ。
もちろん、内心では良くは思われていないだろうが、陛下も特に咎めることはない。
それを良いことに、私はたまに町に出かけたりする。



今日の目的は、今、町にいるという吟遊詩人を探すことだった。
それは呆気ない程すぐに解決した。
最初に声をかけた男が、詩人の泊まっている所を教えてくれたのだ。
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