夢幻の騎士と片翼の王女

「こ、これはリュシアン様！」

詩人は、ビクトルという貴族の屋敷に身を寄せていた。



「ここに、詩人が来ているはずだが…」

「は、はい。
誰か、ルーネをここへ！」



しばらくして、若い詩人と思われる男がメイドに伴われて現れた。
とても物静かな雰囲気の男だった。
詩人は、今日、この町を去る予定だったと話した。
俺は、もうしばらくこの町にいてくれるように頼み、奴を城へ連れ帰った。



城に戻った俺は、詩人に作り話を聞かせた。
俺は、子供の頃から詩人の歌が大好きで、本当は詩人になって様々な町をめぐりたいものだが、王子と言う立場上そんなことは出来るはずがない。
だから、せめて、ほんのしばらくで良いから詩人になってみたい。
俺に、歌を教えてくれ。
そして、一緒に歌ってほしい…と。



詩人は、私の申し出を快諾してくれた。
早速、詩人は私に歌を教えてくれた。



夜更けに見張り台で歌いたいと言ったら、少し驚いているようだったが、特に疑うこともなく、詩人は琴を奏で、俺と一緒に歌ってくれた。



それが、幽閉の塔にいる亜里沙のためだなんて、少しも気付くことなく……