夢幻の騎士と片翼の王女
心の変化(side リュシアン)
「さすがはリュシアン様!
筋がよろしくていらっしゃる。」
俺の演奏を聴いて、楽士は大げさに手を叩いた。
「本当にこれで良いのか?」
「もちろんです!
この短期間にこれほど上達される方はなかなかいらっしゃいません。
あとは、奏でる時にどこまで感情を込めることが出来るかという問題だけです。」
多少の世辞は入ってるだろうが、そう言われて悪い気はしなかった。
「じゃあ、また明日も頼む。」
「ははっ、かしこまりました。」
楽士が去り、一人になった部屋の中で、俺はリュートの弦を静かに弾いた。
(俺は、一体、何をやってるんだろう…)
あの日以来、雨の日以外は毎日俺は歌を歌い続けた。
そのうちに、楽器を持って歌いたいと思うようになり、楽士からリュートの弾き方を教わるようになった。
かれこれ一か月ほどになるだろうか。
真面目に練習したせいか、ようやく奏でながら歌えるようになった。
女を抱くことでしか退屈な時間を潰す術を知らなかったこの俺が、寝る間も惜しんで楽器の練習とは…
この変わりようが、自分でも信じられない気分だ。
俺は、もしかしたら世界一愚かな人間なのかもしれない。
アドルフの側室になる女のことが気にかかり、彼女を励ますために歌を歌い、楽器まで習得したのだから。
亜里沙は、俺の歌なんて気にも留めていないかもしれないのに…
彼女の気持ちが少しでも明るくなれば…
そう思うと、練習にも自然と身が入った。
辛いどころか、楽しいとさえ思えた。
女で気を紛らせていた頃には感じたことのなかった充実感を感じていた。
そのことが自分でも少し不思議な気分だ。
筋がよろしくていらっしゃる。」
俺の演奏を聴いて、楽士は大げさに手を叩いた。
「本当にこれで良いのか?」
「もちろんです!
この短期間にこれほど上達される方はなかなかいらっしゃいません。
あとは、奏でる時にどこまで感情を込めることが出来るかという問題だけです。」
多少の世辞は入ってるだろうが、そう言われて悪い気はしなかった。
「じゃあ、また明日も頼む。」
「ははっ、かしこまりました。」
楽士が去り、一人になった部屋の中で、俺はリュートの弦を静かに弾いた。
(俺は、一体、何をやってるんだろう…)
あの日以来、雨の日以外は毎日俺は歌を歌い続けた。
そのうちに、楽器を持って歌いたいと思うようになり、楽士からリュートの弾き方を教わるようになった。
かれこれ一か月ほどになるだろうか。
真面目に練習したせいか、ようやく奏でながら歌えるようになった。
女を抱くことでしか退屈な時間を潰す術を知らなかったこの俺が、寝る間も惜しんで楽器の練習とは…
この変わりようが、自分でも信じられない気分だ。
俺は、もしかしたら世界一愚かな人間なのかもしれない。
アドルフの側室になる女のことが気にかかり、彼女を励ますために歌を歌い、楽器まで習得したのだから。
亜里沙は、俺の歌なんて気にも留めていないかもしれないのに…
彼女の気持ちが少しでも明るくなれば…
そう思うと、練習にも自然と身が入った。
辛いどころか、楽しいとさえ思えた。
女で気を紛らせていた頃には感じたことのなかった充実感を感じていた。
そのことが自分でも少し不思議な気分だ。