夢幻の騎士と片翼の王女
心からの微笑み(side アドルフ)
「ジゼル…最近、体調はどうだ?
何か変わったことはないのか?」

「いえ、特に何も……」

思わず舌打ちをしてしまったが、幸い、ジゼルは気付いていないようだった。
一時は少し引き締まったようだったが、またいつの間にか元の通りに…いや、それ以上に贅肉が増えた。
まさに豚のようだ。



毎晩毎晩、吐き気を押さえながら抱き続けたというのに、この女はまだ何の兆候もないと言う。
本当に忌々しい女だ。



しかし、アリシアが幽閉の塔に来てから、あと少しで半年が経つ。
本当に長かった…
あの塔を見上げながら、ずっと恋い焦がれていたアリシアにもうすぐ会うことが出来る…
そう思うと、私の胸は初めて恋をした少年のように高鳴った。



「アドルフ様…?どうかなさいましたか?」

ジゼルのその一声で、私は甘い幸せから地獄のような現実に引き戻された。
どうやら私は自分でも気付かないうちに微笑んでいたようだ。



「何か良きことでもあったのですか?」

「……なんでもない。」

せっかくの良い気分が台無しだ。



「アドルフ様…」

熱い体を摺り寄せてくるジゼルに、突き飛ばしたい衝動をぐっと堪えた。
子が出来るまではなんとか頑張らねばならない。
それさえやり遂げれば、私は思う存分アリシアの所へ行ける…!



「ジゼル…!」

振り向き様にジゼルを押し倒した。
ジゼルが嬉しそうににやりと笑う…
その気持ちの悪い笑みから目を背け、私はジゼルの肉付きの良い体を抱き締めた。

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