夢幻の騎士と片翼の王女




「う、ううん……」

「アリシア様、お気が付かれましたか?」

「アリシア、気分はどうですか?」



目が覚めた時、私は別荘の寝室に横になっていました。
どこかぼんやりとした頭の中に、急に赤く染まったリチャードの姿が浮かびあがり、私の鼓動は速さを増しました。



「お母様…リ、リチャードは…!?」

お母様は悲しい顔で俯き、小さく首を振られました。



「お母様…どういうことなんです?」

私の声が震えました。



「リチャードはあなたをかばい、亡くなりました。
あなたを襲った暴漢を仕留め、あなたを救ったのです。
彼は本当に素晴らしい騎士でした。」



お母様の言葉が、私の耳をすり抜けていきました。



そんな…そんなはずはない…
あのリチャードが死ぬなんて…



だって、彼はまだ若くとても元気で…
抱き合った時の彼の身体は温かく、力強い鼓動を感じた。



その彼が死んでしまうはずがない。



そう…これは夢なんだわ。
私はとても嫌な夢にうなされているのだわ。



こんな夢、すぐに覚める…
目を瞑って深呼吸をして…数を数えて目を開ければ、このいやな夢も終わる…



1…2…3……



再び目を開いた時…
部屋の中は何も変わっていませんでした。
ベッドの傍らには、悲しそうな顔をするお母様と使用人がいて……



絶望に覆い尽された私は、血を吐くような叫び声をあげていました。

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