夢幻の騎士と片翼の王女

同行者（side アドルフ）

（そろそろ行こうか…）



時計の針は１１時少し前を指している。
アリシアの部屋まではせいぜい１０分で着けるから、まだ早いと言えば早いのだが、アリシアに会いたくて、じっとしていられない。



なんなら、時間を勘違いしていたとか、早くに用事が済んだとか…
いや、そもそもそんな言い訳をする必要もないというのに…



（そうだ…堂々として行けば良いのだ。）



私は、自分にそう言い聞かせ、部屋を出た。
歩き始めて少しして…私は今朝のことを思い出していた。



アリシアに会うのが待ちきれず、私は、塔の下で彼女を待っていた。
そして、彼女の顔が見えた時…自分でも気付かないうちに、私は彼女を抱き締めていた。
幸い、アリシアは特に不快な顔はしていなかったが、私は恥ずかしくなって、用事のあるふりをしてその場を離れた。
恥ずかしいことだが、アリシアのことになると、つい理性を失ってしまうのだ。



（しっかりしなくては…）