夢幻の騎士と片翼の王女
昼食会(side リュシアン)
「い、いらっしゃいませ。」

亜里沙は、少し緊張したようにそう言って深く頭を下げた。
そして、顔を上げた時、俺の顔を見てびっくりしたような表情を浮かべた。


それも無理からぬこと…まさか、俺が来るなんて思ってもみなかっただろうから。
そのおどおどした態度を見ていると、いじらしくて抱きしめたくなってしまう。
だが、そんなこと、出来るはずもない。



(亜里沙は、アドルフの側室なのだから…)



何度、そのことを自分に言い聞かせたことだろう。
諦めるしかない…そう思うのに、どうしても気になってしまう。
気になって、気になって…だからこそ、さっき、俺はアドルフにおかしなことを言ってしまったんだ。



普段なら、出会ってもそれほど話はしない。
軽い会釈だけで済ませることだってある。
だけど、さっき、俺はアドルフに話しかけた。
それは、きっとアドルフが亜里沙に会いに行くのだろうと思ったからだ。



やはり、俺の推測通りだった。
アドルフは、亜里沙と一緒に昼食を食べると言った。
いつもなら、そこで別れたことだろう。
なのに、俺は一緒に昼食会に行きたいと言った…亜里沙が、幽閉の塔から戻った祝いを言いたいなんて、理由にもならないことを口にして…



おそらく、アドルフは断るだろうと思った。
俺なんかが来たら、邪魔なだけだ。
なのに、アドルフは断らなかった。
奴が何を考えているのかはわからないが、俺はその幸運を素直に喜んだ。



俺は、プライドも何もかも捨てられるほど、亜里沙に会いたかったのだ。
どんな理由であれ、亜里沙に会うことが楽しみで仕方なかった…



(どうかしてる…今の俺は明らかにおかしい。)



そう思うのに、亜里沙を好きな気持ちはどうしても押さえきれなかった。
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