夢幻の騎士と片翼の王女




「では、また後でな…」

昼食会が終わり…食後のお茶を飲んでしばらくした後…
アドルフ様はそう言って、私を強く抱き締められた。
抱き締められたのはこれで二度目…
いやってわけじゃないんだけど、そういう場面をリュシアン様に見られてると思うと、なんだか落ち着かない。



「はい、お待ちしています。」

何も言わないわけにはいかないからそう言ったけど…
後で…っていうのは一体どういうことなんだろう?



(やっぱり、今夜からお相手をさせられるってこと…?)



そんなことを思ったら、にわかに緊張してしまう。
でも…逃げることは出来ないんだから…
だったら、早くに済ませてしまった方が、却って楽なのかもしれない。



(そうだ…アドルフ様のお相手をさせられたら、リュシアン様のことも諦められるかもしれない…)



アドルフ様の体の向こう側に、リュシアン様が見えた。



リュシアン様は私達をなんとも言えない切ない眼差しで見ていて…



(どうして?どうして、そんな瞳をするの?)



その理由がわからず、困惑する気持ちだけが大きく膨らんだ。
< 178 / 277 >

この作品をシェア

pagetop