夢幻の騎士と片翼の王女
怖ろしい憶測(side アドルフ)
(やはり、あいつ、まだアリシアのことを…)



最初からおかしいとは思っていた。
私とは仲の良くないあいつが、わざわざ一緒に昼食会に行きたいと言ったのだから。



アリシアの前でのあいつの態度を見れば、あいつがアリシアを愛してることははっきりとわかった。
しかし、なぜだ?
アリシアは、この城に来てすぐに幽閉された。
リュシアンがアリシアに会ったのは、ほんの束の間のはず…なのに、なぜ?
私に横取りされたから、こだわっているだけか?
いや…違う。
リュシアンは、明らかにアリシアに好意を感じている。
アリシアを見る時の、あの熱のこもった眼差しを見れば、そんなことは一目瞭然だ。



それに、アリシアも…
悔しいことに、アリシアも奴にはどうやら好意を感じているように思える。



(なぜだ…?)



一瞬で恋に落ちるということがないとは言えないが、リュシアンはこの国きっての女たらしだ。
アリシアごときに一目惚れするとは思えない。
それとも、アリシアが異国の者だから興味を持ったということか?



いや、違う、違う!
そんなものじゃない。
リュシアンは明らかにアリシアに惚れている。



(……もしかしたら……)



リュシアンの輝くような笑顔が頭をかすめた。



そう、それは、アリシアがリュシアンの歌をすごく楽しみにしていたとか、あの歌に励まされたとか言った時のことだ。
リュシアンは、それを聞いてとても嬉しそうに微笑んだ。



(まさか…あいつが、毎晩、歌を歌っていたのは、アリシアのためだったのか?)



しかし、なぜ?なぜ、そんなことをする?
なぜそれほどアリシアのために…


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