夢幻の騎士と片翼の王女
「ここなら大丈夫だ。」

そう言って、リュシアン様は大きな木の根元に腰を降ろされた。
私も少し離れた場所に同じように座った。



「……すまなかったな、こんなことをして。」

「い、いえ…」

「……なぜ、来てくれた?」

「そ、それは……」



私にもわからない。
迷ったのは事実…
罪悪感のようなものも感じてる…



(だけど…リュシアン様と話してみたかった。)



「亜里沙、おまえはアドルフの側室だ。
こんな所を誰かにみつかったら…」

「あら、さっき、リュシアン様がここなら大丈夫だとおっしゃったじゃないですか。」

私がそう言うと、リュシアン様は少し驚いたような顔で私をじっとみつめられた。



「俺が怖くないのか?
ここで俺に襲われたらどうする?」

リュシアン様のやけに真剣なその表情に、私はなぜだか噴き出してしまった。



「なぜ笑う!?」

「だって……」

緊張してるはずなのに、私はどうしても笑うことが止められなくて…



そのうち、リュシアン様も同じように笑いだされた。
笑うと、リュシアン様は急に幼い印象に変わってしまう。
まるで、少年のようなその笑顔に、私は懐かしさのようなものを感じた。
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