夢幻の騎士と片翼の王女
「そう…だったんですか…」
ジゼル様はアドルフ様を深く愛するがゆえに、私のことが許せなかったんだ…
そのお気持ちは私にもわかるような気はする。
だけど、刃物を持ち出すなんて…
「しかも、俺はジゼルに言ってしまった…
側室は婚礼の頃からいたことを、最初は俺の女だったおまえをアドルフが一目惚れして、無理やり、俺から奪ったことを…」
「なんですって…!?」
側室がいたことを知っただけでもショックだっただろうに、その上、そんなことを訊かされたら、頭に血が上っても仕方ない。
それに、ジゼル様が来られたあの時…私達は……
(ジゼル様が感情的になられるのは当然だ…)
だからといって、許されるようなことではないけれど…
きっと、ジゼル様はアドルフ様を愛しすぎておられたのかもしれない。
好きで好きでたまらない人だったから、その分、私のことを酷く憎まれたんだろう…
「亜里沙…本当にすまなかった。
まさか、おまえにまで危害が及ぶなんて、俺は考えてもみなかった。」
「……リュシアン様のせいではありません。
私が悪いのです。」
「何を言う。お前は何も悪くない。
お前は、アドルフに見初められただけだ。」
(ううん、違う…
私のせいだ。私のせいでアドルフ様は亡くなられた……)
そう思うと、ぎゅっと胸が締め付けられた。
「こんな時になんだが…亜理紗…
アドルフは、屋敷に侵入した賊に刺し殺されたことになっている。
ジゼルは、アドルフの死を悼んで後を追ったと…
本当のことなど、国民に話せるはずがないからな。
だから、おまえも決して話してはいけない。
……わかったな。」
私はただ小さく頷いた。
アドルフ様が亡くなった…それは夢なんかじゃない、残酷過ぎる現実だ。
ようやく、心の底からアドルフ様を好きになれたと思ったのに…
アドルフ様もそのことを信じて下さったと思ったのに…
(どうして…)
涙が溢れて止まらない…
私にとって最良の日になるかと思われた時が、最悪の日になってしまうなんて…
『アリシア…私は満足だ…』
アドルフ様の最期の言葉が頭の中に思い浮かんだ。
なぜ?どうして満足出来るの?
アドルフ様はまだお若いのに…無念じゃないはずがない…
なのに、どうしてアドルフ様はあの時、あんなに安らかな顔をして…
『ついに…私は…おまえの…心を……』
なぜそんなにも私を愛して下さったんだろう?
私は、どうしてその深い愛にすぐに応えられなかったんだろう…?
ふと、頭の中をリュシアン様のことが過った。
それは、私がなかなかリュシアン様への想いを断ち切れなかったから?
だから、天罰が下ったの!?
苦しくて、心が粉々に砕けてしまいそうで…
後悔の涙はどれほど流しても止まることがなかった。
ジゼル様はアドルフ様を深く愛するがゆえに、私のことが許せなかったんだ…
そのお気持ちは私にもわかるような気はする。
だけど、刃物を持ち出すなんて…
「しかも、俺はジゼルに言ってしまった…
側室は婚礼の頃からいたことを、最初は俺の女だったおまえをアドルフが一目惚れして、無理やり、俺から奪ったことを…」
「なんですって…!?」
側室がいたことを知っただけでもショックだっただろうに、その上、そんなことを訊かされたら、頭に血が上っても仕方ない。
それに、ジゼル様が来られたあの時…私達は……
(ジゼル様が感情的になられるのは当然だ…)
だからといって、許されるようなことではないけれど…
きっと、ジゼル様はアドルフ様を愛しすぎておられたのかもしれない。
好きで好きでたまらない人だったから、その分、私のことを酷く憎まれたんだろう…
「亜里沙…本当にすまなかった。
まさか、おまえにまで危害が及ぶなんて、俺は考えてもみなかった。」
「……リュシアン様のせいではありません。
私が悪いのです。」
「何を言う。お前は何も悪くない。
お前は、アドルフに見初められただけだ。」
(ううん、違う…
私のせいだ。私のせいでアドルフ様は亡くなられた……)
そう思うと、ぎゅっと胸が締め付けられた。
「こんな時になんだが…亜理紗…
アドルフは、屋敷に侵入した賊に刺し殺されたことになっている。
ジゼルは、アドルフの死を悼んで後を追ったと…
本当のことなど、国民に話せるはずがないからな。
だから、おまえも決して話してはいけない。
……わかったな。」
私はただ小さく頷いた。
アドルフ様が亡くなった…それは夢なんかじゃない、残酷過ぎる現実だ。
ようやく、心の底からアドルフ様を好きになれたと思ったのに…
アドルフ様もそのことを信じて下さったと思ったのに…
(どうして…)
涙が溢れて止まらない…
私にとって最良の日になるかと思われた時が、最悪の日になってしまうなんて…
『アリシア…私は満足だ…』
アドルフ様の最期の言葉が頭の中に思い浮かんだ。
なぜ?どうして満足出来るの?
アドルフ様はまだお若いのに…無念じゃないはずがない…
なのに、どうしてアドルフ様はあの時、あんなに安らかな顔をして…
『ついに…私は…おまえの…心を……』
なぜそんなにも私を愛して下さったんだろう?
私は、どうしてその深い愛にすぐに応えられなかったんだろう…?
ふと、頭の中をリュシアン様のことが過った。
それは、私がなかなかリュシアン様への想いを断ち切れなかったから?
だから、天罰が下ったの!?
苦しくて、心が粉々に砕けてしまいそうで…
後悔の涙はどれほど流しても止まることがなかった。