夢幻の騎士と片翼の王女
あれから…(side リュシアン)
「亜里沙、少し散歩にでも行かないか?」
「そうですね。」
亜里沙は素直に俺の誘いに応じた。
あれから…アドルフがいなくなってから、早くも五年の歳月が流れた。
あっという間のようにも思えるが、この五年の間には、本当にいろいろなことがあった。
亜里沙は、最近になりようやく落ち着きを取り戻したが、一時期は、彼女も死んでしまうのではないかと思う程、落ち込んだ時期があった。
それも仕方のないことだろう。
アドルフは、亜里沙をかばって死んだのだから。
亜里沙はそのことで自分を責め続けた。
だんだんと食は細くなり、眠る時間も少なくなり、一時は衰弱して骨と皮になっていた。
生気のない顔をして、「私のせいでアドルフが死んだ」と泣きじゃくる亜里沙を、俺はありきたりな言葉で慰めることしか出来なかった。
彼女がこのまま死ぬかもしれないという不安に怯えながら、情けないことに俺には何も出来なかったのだ。
アドルフ夫妻がいなくなったことで、俺は、奴の代わりにいろいろな役目を命じられた。
今まではいてもいなくても良かった俺が、アドルフが死んだことにより、執務を任せられるようになったのだ。
俺は、この時とばかりに、国王に交換条件を出した。
それは、将来、亜里沙を妃にするということ。
アドルフが亡くなってしばらくした時、俺はそのことを国王に話したのだが、国王は亜里沙のことを酷く嫌っていた。
まるで、アドルフ夫妻の死を亜里沙のせいのように言い、あんな女と関わっては、おまえまでが不幸になると言い捨てた。
国外追放しないだけでもありがたいと思えと言われた。
だが、すぐに情勢は変わった。
アドルフが死んだことで執務に支障が出始めたのだ。
アドルフ夫妻の息子はまだ赤子…そうなれば、その役目を継ぐのは俺しかない。
だから、俺は、将来、亜里沙を妃にすることを条件に、その役目を果たすことにしたのだ。
俺がいない間は、亜里沙に一日中見張りを付け、万が一のことがないように監視させた。
住む場所も別の所に移した。
あんなことがあった屋敷には、亜里沙だってとても住んではいられないだろうから。
毎日が戦いだった。
一日一日…亜里沙の無事だけを考えて…まるで、崖っぷちをそろそろと進むような毎日だったが、気が付けばいつの間にか五年の歳月が流れていた。
まだ完全に元通りだとは言えないが、亜里沙は泣くことも少なくなったし、たまには笑顔を見せてくれるようになった。
げっそりとこけていた頬も少しふっくらとしてきた。
俺は、そのことが嬉しくて仕方がない。
そう…いつかはきっと…亜里沙はアドルフのことを乗り越えられる…
そのために、俺はどんなことでもするつもりだ。
「そうですね。」
亜里沙は素直に俺の誘いに応じた。
あれから…アドルフがいなくなってから、早くも五年の歳月が流れた。
あっという間のようにも思えるが、この五年の間には、本当にいろいろなことがあった。
亜里沙は、最近になりようやく落ち着きを取り戻したが、一時期は、彼女も死んでしまうのではないかと思う程、落ち込んだ時期があった。
それも仕方のないことだろう。
アドルフは、亜里沙をかばって死んだのだから。
亜里沙はそのことで自分を責め続けた。
だんだんと食は細くなり、眠る時間も少なくなり、一時は衰弱して骨と皮になっていた。
生気のない顔をして、「私のせいでアドルフが死んだ」と泣きじゃくる亜里沙を、俺はありきたりな言葉で慰めることしか出来なかった。
彼女がこのまま死ぬかもしれないという不安に怯えながら、情けないことに俺には何も出来なかったのだ。
アドルフ夫妻がいなくなったことで、俺は、奴の代わりにいろいろな役目を命じられた。
今まではいてもいなくても良かった俺が、アドルフが死んだことにより、執務を任せられるようになったのだ。
俺は、この時とばかりに、国王に交換条件を出した。
それは、将来、亜里沙を妃にするということ。
アドルフが亡くなってしばらくした時、俺はそのことを国王に話したのだが、国王は亜里沙のことを酷く嫌っていた。
まるで、アドルフ夫妻の死を亜里沙のせいのように言い、あんな女と関わっては、おまえまでが不幸になると言い捨てた。
国外追放しないだけでもありがたいと思えと言われた。
だが、すぐに情勢は変わった。
アドルフが死んだことで執務に支障が出始めたのだ。
アドルフ夫妻の息子はまだ赤子…そうなれば、その役目を継ぐのは俺しかない。
だから、俺は、将来、亜里沙を妃にすることを条件に、その役目を果たすことにしたのだ。
俺がいない間は、亜里沙に一日中見張りを付け、万が一のことがないように監視させた。
住む場所も別の所に移した。
あんなことがあった屋敷には、亜里沙だってとても住んではいられないだろうから。
毎日が戦いだった。
一日一日…亜里沙の無事だけを考えて…まるで、崖っぷちをそろそろと進むような毎日だったが、気が付けばいつの間にか五年の歳月が流れていた。
まだ完全に元通りだとは言えないが、亜里沙は泣くことも少なくなったし、たまには笑顔を見せてくれるようになった。
げっそりとこけていた頬も少しふっくらとしてきた。
俺は、そのことが嬉しくて仕方がない。
そう…いつかはきっと…亜里沙はアドルフのことを乗り越えられる…
そのために、俺はどんなことでもするつもりだ。