夢幻の騎士と片翼の王女
「亜里沙、最近、体調はどうだ?」

「はい、良好です。」

「そうか…それは良かった。」

俺たちは、森の中をゆっくりと散策する。



「二コラ様はお元気ですか?」

「あぁ、とても元気だ。
あいつ、見た目も母親そっくりだが、性格もそうだな。
アドルフには全然似ていない。」

「……そうですか。」

言った後で、まずいことを言ったと気付いた。
やはり、まだアドルフのことは極力話さない方が良いのだ。



アドルフ夫妻の息子、ニコラは本当にジゼルに良く似ている。
そのため、国王もあまり二コラには愛情を感じないのではないかと思う。
その反面、ランジャールの国王は、ニコラのことを目の中に入れても痛くない様子で溺愛しており、しょっちゅう、顔を見にやって来る。
本当ならば、ランジャール王国へ連れて帰りたいくらいだろう。
だが、そんなことは出来るはずもない。
二コラは、いずれこのユーロジアを継ぐ者なのだから。



二コラがいてくれて本当に良かったと思っている。
奴がいなければ、俺が、この国を継ぐことになったのだから。
そんな面倒なことは御免だ。
二コラが大きくなれば、俺は昔通り、みそっかすの王子に戻れる。
あと、しばらくの辛抱だ。
そうなったら、亜里沙を連れ、城を出て、どこか静かな場所で穏やかに暮らそうと思っている。
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