夢幻の騎士と片翼の王女
prologue~Ⅱ(side エドモンド)




「なんということを……」



婚礼の夜、アリシア姫様が亡くなられたという悲しい報せが、国中を駆け巡った。
国民には急な病で亡くなられたということにされたが、本当はアリシア様が自ら毒をあおられたのだ。
そのことを知るのは城に仕えるごく一部の人間だけだ。



(あの時、アルフレッドがカードを散らかさなければ…)



そう思うと、とても悔しい。
おそらく、カードにはなんらかの警告が出ていたはずだ。
それさえわかっていれば、もしかしたらこんなにも悲しい結末を招くことにはならなかったかもしれない。
なんらかの手が打てたはずだ。
もしや、アルフレッドはその結果を知っていてあんなことを…?
いや、それはあまりにも飛躍しすぎだ。
いくらなんでも、考え過ぎだろう。



(姫様……
あなたを救えなかったせめてもの罪滅ぼしに、どうかこれをお受け取り下さい。)



私の目の前には、赤い宝石と青い宝石がついた指輪がある。
赤い宝石には、「アリシア様がリチャードを愛する心」を、そして、青い宝石には「リチャードが姫様を愛する心」が封じ込めてある。
いつの日か…二人が結ばれるようにと、渾身の魔力を振り絞って作ったものだ。
私は、指輪をオルゴールの小箱に収めた。



(いつの日か…どうか二人が結ばれますように…)



私は、見張り台に上り、二つの小箱を空高く放り投げた。
小箱は宙を舞い、空に溶け込むように消え失せた。

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