夢幻の騎士と片翼の王女
「……里沙……亜里沙!」

「えっ!?」

「どうしたんだ?ぼーっとして…」

「あ、す、すみません!」

「謝ることはない。」

リュシアン様の穏やかな微笑みに、私もついつられて笑ってしまった。
本当に…この人はなぜこんなに優しい笑顔をするんだろう…
リュシアン様の笑顔がまぶし過ぎて、私は思わず目を逸らした。



「もう少ししたら執務も落ち着く。
時間が出来たら、どこかに旅でもしてみないか?」

「え……?」

どういうことだろう?って、一瞬焦ってしまったけど…
きっと、私に気分転換をさせてやろうってお考えなんだろう。
でも、大丈夫なのかな?
リュシアン様はまだ独身なのに、私なんかと旅行したら変な噂を立てられたりしないかな?



「あ、は、はい、そうですね。」

私にはどう答えれば良いのかよくわからず、とりあえず曖昧に答えておいた。
そうだ…深刻に考えることはない。
リュシアン様だって、軽いお気持ちで言われてるんだろうし、何も二人っきりで旅行するわけじゃない。
いや、旅行に行こうっていう話自体、社交辞令のようなものかもしれないのだから。

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