夢幻の騎士と片翼の王女
そもそもリュシアン様がまだご結婚されないのが不思議だ。
もういいお年なのに…



以前、アドルフ様が言われてた。
ジゼル様とは、国のために結婚したんだって。
それはユーロジアの王子としての役目なんだって。
だから、ジゼル様に対して愛情はないようなことを言われてた。



詳しいことはわからないけど、王家っていうのは政略結婚みたいなことが多いような気はする。
なのに、どうしてリュシアン様はご結婚なさらないんだろう？



「亜里沙…どうかしたのか？」

「えっ？い、いえ、別に…その…ちょっと考え事を…」

「何を考えていたんだ？」

「えっと、その…旅行に行くならどこが良いかと…」

私は咄嗟にそんな嘘を口にした。



「どこでも構わんぞ。
亜里沙の行きたいところへ行こう。」

まただ…リュシアン様はまたあの優しい微笑みを浮かべられた。
人を幸せにする笑顔っていうのか、なんだかとっても安心出来る。
甘えちゃいけない人だってことはわかってるのに、つい甘えたくなってしまう…



だから、リュシアン様と会うのは嬉しいけれど辛い。
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