夢幻の騎士と片翼の王女
「わぁ…なんて綺麗…」

「だろ?手を伸ばせば、星が掴めそうだろ?」

「本当にそうですね。」



俺たちは、山の中の屋敷に向かった。
大臣が以前使っていた別荘だ。
最近ではここに来ることもほとんどないと言っていたので、俺はそこをしばらく貸してもらうことにした。



ここには子供の頃遊びに来たことがあった。
大臣の息子は俺と年が近く、子供の頃は良く遊んだものだ。
長い梯子を使ったら、星に手が届くと奴が言い出し、二人で梯子を繋いで星を取ろうとしたこともあった。



「……どうかなさったんですか?」

「え?いや…なんでもない。」



俺は知らないうちに微笑んでいたようだ。
懐かしい思い出に、つい和んでしまったのだろう。



「星に手が届くとしたら、亜里沙はどの星が欲しい?」

「星…ですか?」

亜里沙は、何かを考えるかのように、夜空をじっとみつめた。



「星は…そのままで良いです。夜の空で輝いているのがきっと一番美しいと思いますから。」

「……それもそうだな。」

そんな他愛ない答えさえも、俺には愛しく思えた。
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