夢幻の騎士と片翼の王女
「あ、忘れるところだった…!」

リュシアン様は、そう言って懐に手を入れられて、そこから小さな箱を取り出された。
その箱に入っているものは、おそらく指輪…



「亜里沙…これを受け取ってくれ。」

蓋を開けたそこには、柔らかな日の光のような石の付いた指輪が収まっていた。
私は反射的に左手を差し出した。
リュシアン様が私の人差し指に指輪をはめられる。
この世界では、薬指ではなく人差し指にさすのが通常らしい。
私の指で輝く指輪…その瞬間、私は何とも言えない不安な気持ちを感じた。



私…本当に幸せになって良いんだろうか?
アドルフ様はあんなことになってしまったのに…



「あ、あの…リュシアン様…」

指輪にかけた手を、リュシアン様が止められた。
リュシアン様は、私の意図を察せられたようだ。



「すぐに返事をしなくて良いんだ。
だが……その指輪だけは付けていてくれ。頼む。」

「は、はい。」

リュシアン様のまっすぐな目を見たら、私には頷くしかなかった。



嬉しい気持ちと、後ろめたい気持ちが激しくせめぎ合う…



私だけが幸せになって良いのか?…その疑問が胸の中を覆いつくした。
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