夢幻の騎士と片翼の王女

広がる不安（side リュシアン）

（急ぎ過ぎたか…）



プロポーズをしてから、亜里沙は、なんとなく俺を避けるようになった。
それほど、あからさまな避け方ではないが、彼女が俺に対して心を閉ざしていることは、その目を見ればよくわかる。



俺はやはり急ぎ過ぎたのだろうか？
彼女はまだアドルフのことを引きずっているのか…それとも、単に俺のことが嫌いなのか？



そうではないと思う…
彼女は少なくとも俺を嫌ってはいない。
そう感じるのは俺の自惚れなのか？



彼女に会う度に俺は不安になっていく。
本心を気取られまいとして、彼女はいつもと同じようにふるまってはいるが、目の奥がとても冷ややかで、俺を拒んでいるように感じる。



無理にでも結婚を進めるか？
そうすれば、彼女も諦めて俺を受け入れてくれるだろう…



しかし、そんなこと…俺に出来るはずはなかった。
俺は、亜里沙を愛しているのだから…



やはり、待つしかないのだ。
彼女が、俺を受け入れてくれるのを…



そう思っても、やはり不安でたまらなかった。
事を急いだことへの後悔だけが俺の胸を支配した。