夢幻の騎士と片翼の王女
お母さんがすぐにこっちに来てくれることになった。
電話を切った途端、ひざががくがくして私はその場に座り込んでしまった。
なんだかわからないけど、涙が止まらない…



しばらく泣いてて…それから私は不意に気が付いた。
今、私が着ているのは、ユーロジアの人が着る長いドレス。
こんなのを着てたら、絶対におかしいって思われる。



確か、ここにも私の服が何着かあったはず。
二階の客間に向かって階段を駆け上り、クローゼットを開いた。



あった…!
私の服が…
早速、それに着替えて、ドレスを紙袋に入れて、クローゼットの奥深くに仕舞い込んだ。
髪の毛もおかしい。
少し乱れてるとはいえ、綺麗に結い上げられた髪を私はほどいた。
ここを出る時より、いつの間にかずっと長くなった髪…油のようなもので固められてるから、ブラシで梳かして一つに束ねた。



お母さんが来てくれるのは良いけど、一体、どう言ったら良いんだろう?
本当のことを言っても信じてもらえるはずがない。
頭がおかしくなったと思われて、病院に入れられてしまうかもしれない。
やっぱり、ここは嘘を吐かないと…
誰かに誘拐されたことにするしかないか…
でも、犯人がどんな人だったか聞かれたら…



あれこれ考えてみたら、酷く厄介だということに気付いた。
きっと捜索願も出されてるだろうから、警察にも話さないといけないだろう。
警察に嘘なんか吐いてもバレる?
でも…どう考えたって、ユーロジアにいた頃の話なんて話せない。
信じてもらえるわけないもん。



……一体、どうしたら良いんだろう?



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