夢幻の騎士と片翼の王女




「……少しは落ち着いた?」

「うん、ごめんね。」



泣いて泣いて…止まらなくなった涙が枯れるまで泣いて…
ようやく私は、落ち着きを取り戻した。



「電気も付けずにどうしたの?」

「え…で、電気…つかなかったよ。」

泣きすぎて、しゃべるのが苦しい。



「ブレーカーを落としてただけじゃない。」

「そ、そうだった…の…」

ブレイカーのことなんて、思いつきもしなかった。



「亜里沙、お腹は減ってないか?どこか痛いとか苦しいところはないのか?」

「う、うん…体調は大丈夫。」



私が電話をかけた後、お母さんがお父さんに電話をして、そして二人でここに駆けつけてくれたらしい。



「とりあえず、今日はここに泊まるか?
それとも家に帰りたいか?」

「う、うん…お父さんに任せる。」

私がそう言うと、お母さんとお父さんは何やら相談していた。
帰れないことはないけど、家までは何時間もかかるから、私の体調を気遣ってくれているのかもしれない。



「亜里沙、じゃあ、今夜はここに泊まろう。
何か食べるものを買って来るから、おまえは母さんと待ってなさい。」

「う、うん、ありがとう。」

お父さんが買い物なんて珍しい。
本当ならお母さんを連れて行きたいところだろうけど、私を一人にするのが心配なんだろうな、きっと。


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