夢幻の騎士と片翼の王女
「お母さん…本当にごめんね、心配かけて…」

「いいのよ、そんなこと…
あなたが無事に戻って来てくれただけで…」

そう言って、お母さんは目尻に溜まった涙を拭った。



「私…私ね…その…誰かに誘拐されて…」

「良いのよ、無理に話さなくて。
そのことはまた先生とお会いしてからにしましょう。」



先生っていうのは、きっと精神科かなにかの先生のことだろうな。
そうだよね…こんなことがあったんだもん。
仕方ないよね…



「あ、あの、お母さん…私、どのくらい行方不明になってたの?」

「六年と少しよ。」

「六年……」



やっぱり、ユーロジアとこっちの時間は同じようなものなんだ。
呼び方は違ってても、向こうの年は12か月、月は30日だったもの。
じゃあ、私はやっぱり今24歳なんだ。



「本当に良く戻って来てくれたわね。
でも、どうして家じゃなくてここだったの?」

「え…わ、わからないけど、この近くで車から降ろされて…」

「そうだったの…でも、よくこの中に入れたわね。」

「か、勝手口の鍵が開いてたよ。」

「えっ!?そうなの?」

私は黙って頷いた。
そうじゃないと、辻褄が合わない。
いきなり異世界から屋根裏に飛んで来た…なんて、言えるはずもないから。
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