夢幻の騎士と片翼の王女




「亜里沙…もういいのか?
アイスも買ってあるぞ。」

「うん、ありがとう。
今、お腹いっぱいだから…」

お父さんが食べきれないほどのお弁当やらお惣菜やらスイーツを買って来てくれた。
お兄ちゃんからも電話があって、いつもは冷静なお兄ちゃんが涙声になっているのを聞くと、私がいなくなった後、本当に大変なことになってたんだって実感した。



「じゃあ、お風呂にでも入ったらどうだ?」

「うん、じゃあ、そうするね。」

ひさしぶりの便利な生活…
スイッチ一つで明るくなって、テレビも付くし、お風呂だってすぐにわく。
食べるものだって、お店に行けば何でも買える。
以前は、ここのことを不便だって思ってたけど、ユーロジアの暮らしに比べたらまるで天国だ。
だけど…不思議とその便利さを寂しく感じてしまう。
ユーロジアでは何をするにも人の手がかかり、その分、ありがたみや温かみみたいなものが感じられた。
たった六年だったけど、あそこでの暮らしは、私の中に大きな変化をもたらしていた。
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