夢幻の騎士と片翼の王女

別荘にて（side 亜里沙）

＊



「うっぷ。な、何なのよ、これ…」

舞い上がるほこりを極力吸い込まないように息を止め、扇子代わりに手を振って汚れた空気を払った。



「こんなの一人じゃ無理だってば。」



私は小さな窓を開け、窓から顔を突き出して新鮮な空気を吸い込んだ。
空は青く広く…あたりに広がる緑の木々が目に嬉しい。



（本当に良い所だよね…）



ここは、おじいちゃんの別荘。
おじいちゃんが亡くなってからは、ここを訪れる者もなく、何年もほったらかしにされていた。
とっても良い所なんだけど、いささか不便な場所だから。
でも、最近、この近くに新幹線の新駅が出来、道路も整備されて、今までとは段違いに来やすくなった。
それを機に、リフォームしようって、お父さんが言い出して…



で、リフォーム前に少し片付けをしないといけないってことになり…
その役目を「暇な」私が仰せつかったというわけだ。



（みんな、酷いよ…こんな大変なこと、私に押し付けて…）



とはいえ、この場所は子供の頃からけっこう好きな場所だし、その上、お小遣いももらえたし…悪いことばかりじゃないけどね。



（さて、と…ちょっとずつでも頑張るか…）



私は、ゆっくりと立ち上がった。