夢幻の騎士と片翼の王女

『亜里沙…亜里沙……』



誰？私を呼んでいるのは…



『亜里沙…亜里沙…』



暗闇の中、声だけが悲しく響く…
そこに突然差し込んだ明るい一条の光…



リュシアン様…！
声の主はリュシアン様だった。
リュシアン様はとても悲しそうな顔をしていた。



『亜里沙…どこにいる？
亜里沙…！』



「リュシアン様！」

思わず、私は声を上げた。



（あ……）



「亜里沙、どうしたの！？大丈夫？」

「う、うん、何でもない…」



……夢だった。
私の隣のベッドにはお母さんがいて…私の声に飛び起きて心配してくれた。



「本当に大丈夫なの？」

「うん、ちょっと怖い夢を見ただけ…騒がせてごめんね。」

「お水でも飲む？」

「ううん、本当に大丈夫だから。」

「そう…じゃあ、寝なさい。
お母さんはここにいるし、心配はなにもないから…」

「うん、わかった。」



申し訳ないな。
お母さん、私にすごく気を遣ってくれて…



目を閉じたら、以前のことを思い出した。
私が怖い夢を見た時、メアリーさん達がすぐに駆け付けてくれた…



大丈夫かな？
私がいなくなったことで、メアリーさん達、お咎めを受けてなきゃ良いけど…



それに…リュシアン様…
誤解されてるかもしれない。
リュシアン様との結婚が嫌で、私が逃げたんじゃないかって…



そんなことするわけない。
リュシアン様のお気持ちを迷惑だなんて思ったことはない。



でも……出来ることなら、私のことなんか早く忘れて、どこかの国のお姫様と幸せになって欲しいって思う。



きっと、その方がリュシアン様にとって良いことだと思うから…