夢幻の騎士と片翼の王女
「亜里沙、今日はどうだった?」

「うん、いつもと同じだよ。」

「そうか…腹減っただろ?すぐに支度するからな。」



兄さんは、着替えるとすぐに夕飯の支度に取り掛かる。



朝から働いて…帰って来てからも、私の世話や家事までして、兄さんは、疲れてないんだろうか?
そう思うのに、私には満足に家事さえ出来ないことが、悔しくてたまらなかった。



それだけじゃない。
兄さんは、私より5つ年上だ。
付き合ってる人もいるみたい。
最近は結婚する年齢が高くなったとはいえ、兄さんだって本当は早く結婚したいはずだ。
なのに、私がこんなだから、心配で結婚も出来ないんだ、きっと。
本当に、私は家族に迷惑をかけるばかりだ。



(私なんて…いなくなれば良いのに…)



そんなことを思うと、たまらない気持ちになって涙が出そうになってしまう。



私、病気なんだな…
そんな自覚はある。



焦らなくて良い。
必ず良くなるから…って、お父さんは言ってくれたけど…



本当にそうなんだろうか?
私は乗り越えられるだろうか?
アドルフ様だけじゃなく、リュシアン様とも離れ離れになってしまった今…
私には、立ち直れる自信はまったくなかった。


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