夢幻の騎士と片翼の王女
「もう良い。
俺は彼女の無事を信じている。」

「いえ…亡くなったと言っているのではありません。
その方は、少し弱ってはいらっしゃいますが、生きておられます。」

「……どういうことだ?」

「それが…こんなことは初めてなのでお伝えしにくいのですが…簡単に言えば、その方がいらっしゃるのはこことは違う世界とでも言いましょうか。」

「他所の国にいるというのか?」

「いえ、違います。
この世界とは、文明も時代も何もかもが違う異なる世界…とでも申しましょうか。」

「これ、カイヤ!たわけたことを申すでないぞ!」

チャールズが、カイヤを叱責した。
しかし、俺は、カイヤの言葉に関心を感じていた。



亜里沙がいなくなってから、俺は、教会を訪ねた。
以前、亜里沙はしばらく教会に厄介になっていたと聞いたことがあったからだ。
だからもしや教会にも来たのではないかと考えたのだが、亜里沙は、教会には立ち寄ってはいなかった。
俺はその時、フィリップという神父に、亜里沙が初めて現れた時のことを訊いた。
彼女は、教会に来た時、見たこともないようなおかしな格好をしていたという。
しかも裸足だったそうだ。
そして、自分は、地図にも載っていない、日本という小さな島国から来たと話したそうだ。



確かに、亜里沙は一目みただけで異国の者だと思える。
だが、今まで亜里沙のような異人がこの国に来たことはなかった。
彼女がどうやってこのユーロジアに来たのかは、神父も知らないと言っていた。
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