夢幻の騎士と片翼の王女
(これ……)



両手に収まるくらいの木で作られた小箱…
蓋には繊細な模様が彫り込まれている。



それを見た時…私は遥か昔のことを思い出した。



確か、あれはまだ私が5歳か6歳の頃だった。
森だったか…どこだったか、はっきり覚えてないけど、この箱は私がみつけたんだ。
きっと、小箱の中にはすごい宝物が入ってるんだって思って、わくわくしたのを覚えてる。
でも、鍵も付いてないのに、この箱はどうしても開かなくて…
それで、仕方なくお兄ちゃんに見せて、開けてもらおうとしたんだけど、やっぱりお兄ちゃんでも全然開かなくて…



(それからどうしたんだっけ?)



昔のことだけに良く覚えてない。
でも、きっと、開かないから諦めて放置しちゃったんだろうな。



その小箱に手を伸ばした時、下から電話の音が聞こえた。



「はーい!」



私は、急いで階段を駆け下りた。
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