夢幻の騎士と片翼の王女
「もう良いだろ?亜里沙…下に戻ろう。」

「ま、まだよ!
話はまだ終わってない。」

「……そうか。」



まただ…兄さんの優しいけど、哀れみのこもった瞳…
私はその瞳から目を逸らして言葉を続けた。



「私はこの指輪をさした…
そしたら、その時、目も眩むような光が……」



(え……?)



そう言った途端、あたりがものすごく眩い光に包まれて、私は固く目を閉じた。
そう…あの時と同じ…



閉じた瞼から、光が落ち着いたのを感じて、私は再び目を開けた。



(嘘……)



光の残像が残る中…私の目の前にはリュシアン様が立っていた。



私…本当におかしくなったのかもしれない…
そう思った時…



「亜里沙!!」



私は、リュシアン様に抱き締められた。
伝わって来る温もりは、それが夢ではないことを教えてくれた。



「リュシアン様…これは夢ではないのですか?」

「夢でも幻でもない。
……会えた…やっと、会えたな。」

溢れる涙で、リュシアン様がゆらゆら揺れる。
リュシアン様は夢じゃないって言ったけど、私には今の幸福がまだどこか信じられないでいた。



「き、君は一体誰なんだ!
どこから入って来た!?」



私を現実に引き戻したのは、怒りを含んだ兄さんの声だった。
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