夢幻の騎士と片翼の王女




「いよいよ、明日だな。」

「ええ……」



なんだかドキドキする…
明日、私はついにリュシアン様と結婚する。



ウェディングドレスも縫いあがった。
繊細な刺繍が施され、宝石が散りばめられたとてもゴージャスなものだ。
ドレスの裾もヴェールもものすごく長い。



明日、大勢の人の前で失敗しないように、教えられた手順を何度も頭の中に描く。
いやという程、勉強したから、間違えないとは思うのだけど、それでもやっぱり心配だ。



「亜里沙…どうかしたのか?」

「え?い、いえ…」

「そう言えば、アドルフはお前のことをずっとアリシアと呼んでいたな。
なぜなんだ?」

「なぜかはわかりませんが…亜里沙というのはユーロジアにはない名前ですから、それで呼びやすいように呼ばれていたのではないでしょうか?」

私がそう答えると、リュシアン様は何も言わず遠くをみつめられた。



「そんなことにさえ、嫉妬してしまう。」

「え?」

「アドルフは、おまえを他の者とは違う呼び方で呼ぶことによって、おまえを自分だけのものにしていたんじゃないだろうか?」

リュシアン様の激しい視線が私を突き刺す。



「そ、そうでしょうか?」

「亜里沙…お前は俺のものだ。永遠に俺だけのものだ!」

「あ…」



強く抱き締められ、リュシアン様の唇が重なった。
それは、以前のものとは明らかに違うもので…
唇を離れ、耳を…首筋を這いまわり、私の体は恥ずかしさのため、にわかに火照り始めた…



(まさか…とは思うけど…
今夜、ついにマリエッタさんの勉強の成果が試されるの!?)



「亜里沙…明日まで我慢出来ない。」

「リュ、リュシアン様…」



勉強したことはしっかり覚えてたけど…私は何も出来ないまま、リュシアン様に翻弄されて……



私は、リュシアン様にされるがままに流されて…



そして、その晩、私達は結ばれた。
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