夢幻の騎士と片翼の王女
*
「リュシアン王子、おめでとうございます!」
「亜里沙様、おめでとうございます!」
ユーロジアに戻ってから数か月後、私達はついに結婚した。
国王御夫妻は、複雑なお気持ちかもしれないけれど、リュシアン様が身を固められたことについては、やはり喜んでおられるようだ。
国民たちが私たちの結婚を祝い、小さな旗を振ってくれている。
私達はそれに応えるように、バルコニーから手を振り返す。
婚礼の儀式も間違えずに済んで、私はほっと胸をなでおろした。
「亜里沙…とても綺麗だ。」
「あ、ありがとうございます。」
家族のことを想うと胸は痛むけど…
だけど、後悔はしていない。
私の取った行動が正しかったかどうかはわからないけれど…
たとえ間違っていたとしても、私には後悔はない。
愛する人と離れるのはもういやだから…
リュシアン様とは、どんなことがあっても絶対に離れない…!
「おぉ、亜里沙…あそこに…」
「まぁ…」
リュシアン様の指さす先には、大きな虹が架かっていた。
「ユーロジアでは、虹は幸せの前兆なんだ。」
「日本でもそうです。」
私達は、空にかかる虹をみつめた。
世界は全然違うけど…ユーロジアの虹も日本と同じ七つの色だ。
「リュシアン様…なにか、歌を歌っていただけませんか?」
「そうだな…それでは…」
リュシアン様は深く息を吸い込んで…
『空に輝く虹の橋よ、どうかあの子に伝えてほしい…』
低くて響きのあるリュシアン様の声に、私は耳を傾けた。
それは、旅人がある田舎の町で美しい女性に恋をして、想い悩む恋の歌だった。
「……素敵な歌ですね。」
「幼い頃に覚えた歌だ。
今日は少しばかり歌詞を変えた。」
「そうなんですか。」
私がリュシアン様にしなだれかかると、リュシアン様は私の髪を優しく撫でて下さった。
「君の髪は、猫よりも触り心地が良いな…」
リュシアン様の指の感触に、私はうっとりと目を閉じた。
(リュシアン様、私、ずっとあなたについていきます。
あの虹に誓って……)
見上げた虹の向こう側で、両親や兄さんが微笑んでいるような…そんな気がした。
~fin.
「リュシアン王子、おめでとうございます!」
「亜里沙様、おめでとうございます!」
ユーロジアに戻ってから数か月後、私達はついに結婚した。
国王御夫妻は、複雑なお気持ちかもしれないけれど、リュシアン様が身を固められたことについては、やはり喜んでおられるようだ。
国民たちが私たちの結婚を祝い、小さな旗を振ってくれている。
私達はそれに応えるように、バルコニーから手を振り返す。
婚礼の儀式も間違えずに済んで、私はほっと胸をなでおろした。
「亜里沙…とても綺麗だ。」
「あ、ありがとうございます。」
家族のことを想うと胸は痛むけど…
だけど、後悔はしていない。
私の取った行動が正しかったかどうかはわからないけれど…
たとえ間違っていたとしても、私には後悔はない。
愛する人と離れるのはもういやだから…
リュシアン様とは、どんなことがあっても絶対に離れない…!
「おぉ、亜里沙…あそこに…」
「まぁ…」
リュシアン様の指さす先には、大きな虹が架かっていた。
「ユーロジアでは、虹は幸せの前兆なんだ。」
「日本でもそうです。」
私達は、空にかかる虹をみつめた。
世界は全然違うけど…ユーロジアの虹も日本と同じ七つの色だ。
「リュシアン様…なにか、歌を歌っていただけませんか?」
「そうだな…それでは…」
リュシアン様は深く息を吸い込んで…
『空に輝く虹の橋よ、どうかあの子に伝えてほしい…』
低くて響きのあるリュシアン様の声に、私は耳を傾けた。
それは、旅人がある田舎の町で美しい女性に恋をして、想い悩む恋の歌だった。
「……素敵な歌ですね。」
「幼い頃に覚えた歌だ。
今日は少しばかり歌詞を変えた。」
「そうなんですか。」
私がリュシアン様にしなだれかかると、リュシアン様は私の髪を優しく撫でて下さった。
「君の髪は、猫よりも触り心地が良いな…」
リュシアン様の指の感触に、私はうっとりと目を閉じた。
(リュシアン様、私、ずっとあなたについていきます。
あの虹に誓って……)
見上げた虹の向こう側で、両親や兄さんが微笑んでいるような…そんな気がした。
~fin.