夢幻の騎士と片翼の王女
「……なにがおかしいの?」

「いや…君は本当に困った王女様だって思ってね。」

「ひどいわ。笑うことないでしょ。」

私は怒ったふりをしましたが、内心はちっとも怒ってなどいなかったのです。



リチャードがこの城に来るようになってから、どこかに出かける時は、いつも護衛として着いてきてもらうようにしました。
短い時間とはいえ、私は彼と話すようになりました。
彼と過ごす時間はとても楽しいものでした。
リチャードは、昔と変わらず、とても優しくて…
お天気のこと、兵学校でのこと、子供の頃の話…
どれも他愛ない話ばかりですが、彼と話していると本当に楽しいのです。



私には同世代の友達もいませんし、心を開いて話せるような知り合いもいません。
悩みがあっても、何か話したいことがあっても、それらは自分の心の中で処理するしかなかったのです。
王女というものはそういうものだと考えていましたし、諦めてもいました。
そのせいでしょうか?
リチャードと話すと、心がすごく元気になるといいますか、とても幸せで満ち足りた気分になるのです。
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