夢幻の騎士と片翼の王女

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「アドルフさま、おめでとうございます！」

「アドルフさま、どうかお幸せに…！」



私とジゼル姫との婚礼の噂は、瞬く間に国中を駆け巡った。
国民が口にする祝福の言葉が、私には呪いの呪文のように感じられた。



この忌々しい人生が、早く幕を下ろしてくれることだけを私は祈った。
だが、現実には幕を下ろすどころか、私とジゼルの人生はまだこれからなのだ。
ジゼルとの生活が、相当に不快なものになるだろうことは、容易に想像出来る。
考えるだけで、目の前が闇に閉ざされる想いだ。



（いっそ、自ら幕を下ろしてしまおうか…）



そう思うことはあったが、それには大きなリスクを伴う。
私は、最初の生まれ変わりの時、アリシアと巡り合えなかったことを悲観して自死した。
アリシアのいない世界で生きていても仕方がないと思ったのだ。
だが、その次に生まれ変わった時、私は病弱で貧困で運が悪いという過酷な人生を与えられた。
もちろん、アリシアと巡り合えることもなかった。
その時、私は漠然と感じたのだ。
自死はしてはならない。
したら、次の生で苦しむことになる…と。
それは、生まれ変わりの時の法則なのではないかと思った。
その仮定が正しいかどうかはわからないが、それからの私は極力誠実に暮らし、人にも出来るだけ親切にした。
すると、今世では王子として生まれることが出来たのだ。
やはり、この生まれ変わりには、なんらかの法則があるのだと私は感じた。



それを思えば、この先もジゼルと真面目に生きて行くのがきっと一番の得策だ。
そうすることで、近い来世でアリシアと会えるのなら…
ならば、どれほど辛い人生だとしても、私はそれを生き抜かねばならない。



（アリシア……君のためなら、私はどんなことにも耐えられる…！）