夢幻の騎士と片翼の王女
「おぉ…アドルフ王子…
おひさしぶりでございます。」
そう言って、深々と頭を下げたのは、義兄・リュシアンだった。
長い絹糸のような金髪がさらりと揺れる…
リュシアンは、頭の中身の薄そうな待女を従えていた。
「おひさしぶりです。」
リュシアンとは、特に話すことはないものの、食事の席では毎日顔を合わせている。
なぜ、ひさしぶり等というのかはわからなかったが、とりあえず、私も彼に合わせて応えておいた。
「お聞きしましたよ。
ジゼル姫との婚礼がお決まりになったとか…
おめでとうございます。」
「ありがとうございます。」
あいつが本気でおめでとうと言ってるわけではないことは、すぐにわかった。
おそらくは、私が気の進まない結婚をすることを面白がっているだけのことだろう。
「アドルフ王子は、私とは違い、一途なお方のようですから、ジゼル姫はきっとお幸せになれることでしょうね。」
私はその薄っぺらな言葉に、軽く微笑むだけだった。
「兄上を差し置いて、弟の私が先に妃を迎えることになって、申し訳ありません。」
私がそう言うと、リュシアンは小さく口端を上げた。
「お気遣いなく。私はただほんの少しだけ、あなたより先に生まれたというだけのことですから…」
それは抑揚のない冷たい物言いだった。
おひさしぶりでございます。」
そう言って、深々と頭を下げたのは、義兄・リュシアンだった。
長い絹糸のような金髪がさらりと揺れる…
リュシアンは、頭の中身の薄そうな待女を従えていた。
「おひさしぶりです。」
リュシアンとは、特に話すことはないものの、食事の席では毎日顔を合わせている。
なぜ、ひさしぶり等というのかはわからなかったが、とりあえず、私も彼に合わせて応えておいた。
「お聞きしましたよ。
ジゼル姫との婚礼がお決まりになったとか…
おめでとうございます。」
「ありがとうございます。」
あいつが本気でおめでとうと言ってるわけではないことは、すぐにわかった。
おそらくは、私が気の進まない結婚をすることを面白がっているだけのことだろう。
「アドルフ王子は、私とは違い、一途なお方のようですから、ジゼル姫はきっとお幸せになれることでしょうね。」
私はその薄っぺらな言葉に、軽く微笑むだけだった。
「兄上を差し置いて、弟の私が先に妃を迎えることになって、申し訳ありません。」
私がそう言うと、リュシアンは小さく口端を上げた。
「お気遣いなく。私はただほんの少しだけ、あなたより先に生まれたというだけのことですから…」
それは抑揚のない冷たい物言いだった。