夢幻の騎士と片翼の王女
「じゃあ、亜里沙…俺は、キンブル様のお屋敷に花を届けに行って来るから…」

ジェームスさんがそう言いかけた時、どこかのメイドさんらしき人が店を訪れた。



「あのぅ……」

「はい、いらっしゃいませ!」

「ゼリア様のお屋敷に、お花を届けていただきたいのですが…」

「あ…今からちょっと配達に行かないといけませんので、しばらくお待ちいただけますか?」

「それが…急なお客様が来られることになりまして…
急いで、お持ちいただきたいのです。」

「……困ったなぁ……」

ジェームスさんは顎に手をあて、低い声を出した。



「あの…ジェームスさん…私が行って来ましょうか?」

「え…ひとりで大丈夫か?」

「はい、もうこのあたりのことはずいぶんわかるようになりましたし。」

「そうか…それじゃあ、頼むよ。
ゼリア様のお屋敷は、小間物屋の角を曲がってまっすぐ行った、公園のすぐ傍だ。」

「門のすぐそばに大きなルモアの木がありますから、すぐにわかりますわ。」



ルモアの木っていうものがどんな木なのかはわからなかったけど、小間物屋さんはわかる。
とにかくその角を曲がって、まっすぐ行った公園の先に大きな木があるお屋敷を探せば良いわけだから、きっと迷うことはないだろう。



「じゃあ、亜里沙…後のことは頼んだぜ。」

「はい、わかりました。」

ジェームスさんを見送り、私は、メイドさんに言われるままにお花の準備をした。


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