夢幻の騎士と片翼の王女




(この角を曲がって…と…)



荷車を引きながら、私はゼリア様のお屋敷を探した。
貴族のお屋敷からの注文は、たいてい大量のものだ。
とても一人で抱えて持って行けるような量ではない。
重量もけっこうあるから、荷車に載せて行く。
最初は、荷車なんて恥ずかしくっていやだなぁって思ってたけど、最近ではそんなことも思わなくなった。
この国では、小さな子供やお年寄りも働いてるし、荷車を引いてる人もたくさんいる。
それが格好悪いなんて考える人はいないに等しい。
そのことがわかったら、私もそんなことは気にならなくなった。



(あ、公園だ!)



公園らしき場所が見えたと思ったら、そのすぐ傍に、白くて可愛い花をつけた大きな木が…そして、その先に立派なお屋敷が見えた。
きっとあれがルモアの木…ゼリア様のお屋敷だ。
そう思ったら、荷車を引く手にも力が入る。



(あとひとふんばり!)



私はゼリア様のお屋敷を目指し、歩き続けた。
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