夢幻の騎士と片翼の王女




「こちらにお願いします。」

「かしこまりました。」



今までにも貴族のお屋敷には配達に行ったけど、ゼリア様のお屋敷はそのうちのどれよりも大きくて立派なものだった。



(わぁ…すっごいシャンデリア…!)



調度品もすごく高価なものだと思える。
職人が何か月もかかって作り上げたような繊細な細工の施されたものばかりだ。
私はきょろきょろしながら、花の束を持ってお勝手から部屋まで何度も行き来した。



(あとひとつ…)



私は最後の花束を持って部屋に向かった。
その時、廊下の毛足の長い絨毯に蹴躓き…



「あっ!」



身体のバランスを保とうとした時、持っていた花束が私の手を離れた。



そして、その花束は、壁際に置いてあった壺に当たり…
壺はその反動で壁の方に転がって、乾いた音を立てて割れてしまった。
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