夢幻の騎士と片翼の王女
「姫様……!」

心配そうな顔をするエドモンドにハンカチを手渡され、私は自分が涙を流していることに気付きました。
こんな私にもごく普通の人間としての感情があることが…誰かを本気で愛することが出来るのだとわかって、胸がいっぱいになってしまったのです。



「ごめんなさい…ちょっと、びっくりしてしまって…
エドモンド、そ、それで……そのほかにはどんなことが出ていますか?」

動揺を悟られないように、私はそそくさと涙をぬぐい、平静を装って質問しました。
エドモンドは、ゆっくりと頷くと、さらにカードを表に返していきました。



「喜ばしいことに、お相手も姫様のことを愛してらっしゃるようです。」

「ほ、本当ですか!?」

私は思わず身を乗り出してしまっていました。



「はい、ですが、その方は懸命にそのお気持ちを隠されています。」

「そう…ですか…」



きっと、エドモンドの言ってることは真実なのでしょう。
私のことをリチャードが愛してくれている…そう思うと、顔が熱くなりました。
幸せで、幸せで…また涙が溢れて来る程でした。
でも、彼はその気持ちを隠している…
それも当然のことです。
私はここゼラフィナの王女…彼は一介の騎士…身分が違います。
悲しいことですが、彼はそのことをわきまえているのでしょう。
< 9 / 277 >

この作品をシェア

pagetop