夢幻の騎士と片翼の王女
「泣くな!」
私の声に、ジゼルの肩が一瞬跳ね、すすり泣く声が小さくなった。
言うまいと思っていたのに、あまりにしつこいものだから、私も思わず声を荒らげてしまったのだ。
「……そんなにいやだったのか?」
「い、いえ…そうじゃありません。」
「私は……君と結ばれてこんなに幸せだというのに…」
言った直後、自分自身を嫌悪した。
よくもそんな大嘘が吐けるものだ。
しかし、少し無茶を遣りすぎたかもしれない。
いくら好きではないとはいえ、もう少しくらい優しくすべきだったのだ。
なんせ、彼女は我が国とはまるで比べ物にならない程の大国・ランジャール王国の王女なのだから。
「ジゼル…今夜の君は最高だったよ。」
私は、いまだ詐欺師をしたことはないが、こんなに嘘がうまいのなら、来世では詐欺師でもやってやろうか…
「アドルフ様…本当ですか?」
涙でぐしゃぐしゃになったジゼルの目は腫れ、鼻は赤くなって、いつも以上に醜かった。
「本当だとも…私はすっかり君の虜だ。」
「アドルフ様……」
ジゼルが私に身を寄せて来た。
むっとする熱と汗にまみれたにおいに、私は思わず咳き込みそうになるのを懸命にこらえた。
「明日も君を抱きたい。
明後日も、そのまた次の日も…」
息を止め、彼女のにおいを嗅がないように気を付けながらそう言った。
「アドルフ様…」
彼女の唇が私の唇に覆いかぶさる…
(石になってしまえ…!)
心の中でジゼルを呪いながら、私は不快な口づけに耐え忍んだ。
私の声に、ジゼルの肩が一瞬跳ね、すすり泣く声が小さくなった。
言うまいと思っていたのに、あまりにしつこいものだから、私も思わず声を荒らげてしまったのだ。
「……そんなにいやだったのか?」
「い、いえ…そうじゃありません。」
「私は……君と結ばれてこんなに幸せだというのに…」
言った直後、自分自身を嫌悪した。
よくもそんな大嘘が吐けるものだ。
しかし、少し無茶を遣りすぎたかもしれない。
いくら好きではないとはいえ、もう少しくらい優しくすべきだったのだ。
なんせ、彼女は我が国とはまるで比べ物にならない程の大国・ランジャール王国の王女なのだから。
「ジゼル…今夜の君は最高だったよ。」
私は、いまだ詐欺師をしたことはないが、こんなに嘘がうまいのなら、来世では詐欺師でもやってやろうか…
「アドルフ様…本当ですか?」
涙でぐしゃぐしゃになったジゼルの目は腫れ、鼻は赤くなって、いつも以上に醜かった。
「本当だとも…私はすっかり君の虜だ。」
「アドルフ様……」
ジゼルが私に身を寄せて来た。
むっとする熱と汗にまみれたにおいに、私は思わず咳き込みそうになるのを懸命にこらえた。
「明日も君を抱きたい。
明後日も、そのまた次の日も…」
息を止め、彼女のにおいを嗅がないように気を付けながらそう言った。
「アドルフ様…」
彼女の唇が私の唇に覆いかぶさる…
(石になってしまえ…!)
心の中でジゼルを呪いながら、私は不快な口づけに耐え忍んだ。