ヴァージンの不埒な欲望
「愛美ちゃんをずっと見てた」の部分が、頭の中でリフレインする。
頭のてっぺんから「ポンッ!」と一気に、蒸気が上がった。例えるなら、今の私はそんな感じだろう。
さらに熱くなった頬に右手を当て、視線は忙しなくさまよう。恥ずかしさで、このまま溶けてなくなりそうだ。
窺うように視線を、チラリと拓夢さんに向ける。変わらず、楽しそうな笑顔。そこに、“照れ”とか“恥ずかしさ”なんて感情は見えない。
そう、だよね。拓夢さんは、私の顔がおもしろかったから、ずっと見ていただけ。特別な意味なんかない。ペットとか、小さな子どもを見る感じかな。
「拓夢さんも、本をワクワクしながら見てましたもんね!」
小さく息を吐いた後、ちょっとした意趣返しのつもりで言ってみた。
「あっ……俺、そんな風に見えた?」
「はい!こう口角が上がって、目はキラキラしてて。身体は前のめりになっていました!」
拓夢さんに負けじと、顔と身体を動かしながら、その時の拓夢さんを再現する。
「わっ、まるで子どもだね。恥ずかしい」
拓夢さんの頬をうっすらと赤く染める事に成功し、「よし!」と心の中で拳を握った。
「拓夢さんは、何の本を見ていたんですか?」
「日本の戦艦の本。前から探してたんだ」
「日本のセンカンの本?」