ヴァージンの不埒な欲望

“センカン”て?思わず、小首を傾げてしまったら、「そうだよね」と、拓夢さんはクスッと笑った。

「自衛隊が所有する、“護衛艦(ごえいかん)”とか“イージス艦”とか、聞いた事ないかな?」

「あっ、聞いた事は、あるような気がします」

「戦時中の頃の『大和』とか、結構有名なんだけど。映画にもなっているし、聞いた事、ない?あっ、『宇宙戦艦』じゃない方ね」

「わかりました!『戦艦』、だったんだ」

頭の中に、漢字を思い浮かべながら呟いた。拓夢さんはホッとしたように、小さく頷いた。

「乗り物全般が小さな頃から好きだったけど、大きな船と飛行機が、特に大好きだったんだ」

拓夢さんが、くしゃっと笑った。その笑顔からも、拓夢さんの“大好き”が伝わってくる。

「県内にあった自衛隊の基地で、年に一回『航空祭』ていうイベントがあったんだ。普段は簡単に入る事ができない基地の中に入れたり、ブルーインパルスの展示飛行があったり。子どもの頃は、よく両親が連れて行ってくれたんだよ。楽しかったな……」

拓夢さんの、話す声が弾んでいる。

こんな風に自分から、自分自身の事を話してくれるのは初めてだ。

普段は話のきっかけを作る為に、拓夢さん自身の事から話し始める。今から思えば、拓夢さんが自分の事を話すのはそれくらいで、後は聞き役となっている。

拓夢さんの明るい笑顔と雰囲気に、私の顔もどんどん綻んでくる。


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